-------------------------------------------------------------------------------- 15/0/2/1/速詠虚炎/末軌由卯 5/0/0/3/儀1黙黙黙詠龍/困惑する木俣公子 -------------------------------------------------------------------------------- 「さあさあ、次は僕のお相手をお願いできますか?」 「は、はい」 さっきの印象が強過ぎるせいかな……この人……こんなにまともな人がこの学校にいたなんて……。 しかし今夜は私もずいぶんはっちゃけちゃったなあ。 だってあんな濃いメンツを相手にして、普通を貫ける人なんていないよ。 私もそんな変な人たちの一人に入っているんだろうなあ。 この人は辛くないのかなあ。 それとも芯からまともな人なんだろうか。 そんな人、いるんだろうか。 「それでは行きます。お手合わせ、願います」 「あ、どうも。よろしくお願いします」 思わず丁寧な返事をしてしまった。 どうしたどうした、変だぞ私。 いやこれが普通なのかな? 普通って何? 行きますと言われたが、私の方が素早さが高い。 さっさとドラゴンを召喚してしまう。 「おやおやこれは参った、僕ではとても敵いそうにありませんなあ」 ……おやおや? おやおやー? なんだろうこの気持ちは。 はて変なものでも食べたかな。 ドラゴンがいつも通り、ジャブ程度の斬撃を繰り出す。 末軌由卯は派手に吹っ飛ぶ。 「うわあ〜、やられてしまった。しかし僕も負けませんよー。えい、加速剣!」 ……体温計あったかな……なーんかこれ、なんだろなー。 風邪じゃないといいなー。 ドラゴンが徐々に強化されていく斬撃で末軌由卯を追い詰める。 末軌由卯は加速剣と詠唱剣を使う。 《……どうした、さっきから落ち着きがないぞ》 「いやーなんだろねー、風邪かなー、さっきから変な気持ちでねー」 「はい? どうかなされましたか?」 「あいやいやいや、ゴメンゴメン、なんでもないの、ひとり言ー」 「そうでしたか、いやこれは失敬」 「いえいえどういたしまして……」 しまった、ドラゴンと話すときは極力小声で話すように気をつけていたのに、すっかり忘れていた。 しかし……なんでしょうかこのモヤモヤする気持ちは。 恋以外の何かであることは明白なんですけど、どなたか教えてくださいませんかね。 《次のターンで終わりだ。結局何がしたいかよく分からん奴だったな……》 「ふーん。あら綺麗に無傷ねー」 《む、ようやく攻撃してきたと思ったらヌル剣か……まあ、気にすることでもない》 ドラゴンの予告通り、そのターンの一撃で末軌由卯は倒れた。 「いやいや参りました。とてもお強い! 僕ももっと頑張らなければいけませんなあ」 あれ、なんで涙が出てくるんだろう。 うわーん。 なんだこれ。 なんだこれー。 うわードラゴンちょっと待って、消えるのもうちょっと待ってー。 -------------------------------------------------------------------------------- 勝者:困惑する木俣公子 --------------------------------------------------------------------------------