-------------------------------------------------------------------------------- 5/0/0/4/振爆導0詠泡/アフシエーブ 5/2/0/2/盗導0壊吸毒/有 -------------------------------------------------------------------------------- 「どうしたんだい?」 「いや、さっきまであそこにゲーム機があったと思ったんだけど……」 停電後、しばらくぼんやりしていると魔法少年が話しかけてきた。 相変わらず平凡そうな顔だが、表情は明るい。 「さっきまでって?」 「いいや、なんでもない。つーか何だ、魔法少年だったのか」 「ひどいな。今気づいたのか」 「悪い悪い。んじゃせっかくだから何か魔法的なゲームでもするか。どうせ暇なんだろ?」 「なんだか馬鹿にされている気が……暇だけどさ」 「ちょうどいい、あそこの『クイズ・マジカル・マジでマキャヴェリズム』やってみようぜ」 「名前から危険な感じしかしないんだけど」 「いいからこっちこっち」 ………… 「……なんで僕ら座ったら手錠かけられたの?」 「さあ……」 <第一問> 「問答無用で始まったぞ」 「これ対戦てことでいいんだよね」 <第一問:レモン汁に多く含まれ、毛細血管がもろくなるのを防ぐ成分を答えよ> 「なんだこのお昼の健康番組みてーなクイズは……ある意味予想外だぜ」 「うーん、パッと思いつくのは間違いなのかそのまま正解なのか……」 「わからんからこれでいいや」 「じゃあこれで」 「ビタミンC」 「ビタミンC」 <答え:ヘスペリジン(もしくはビタミンP)> 「わかるかーい!」 「せめて4択とかにして欲しい」 <第二問:現在女子高生の間で大ブームのマスコット『生爪ペンギン』が口にくわえているものといえば?> 「はあぁぁ!?」 「聞いたことないんだけど何そのマスコット」 「つーかこれどこがマキャヴェリズムなんだ?」 「むしろどこがマジカルなのかって話だね」 「もしかしてこの手錠が何か関係あるのか?」 「かなり鎖は長いみたいだけど……」 「はっ、もしや」 「なになに」 「おーいイリタクー!」 「ちょ、どこ行くの!?」 俺は理解してしまった。 この手錠は、その鎖の長さの中に行動範囲を限定させるためのもの。 しかし普通にクイズをやるなら席を立つことなどまずあり得ない。 それなのに手錠がかかっているということはつまり、行動範囲内ならあらゆる手段でカンニングしても良いということの証明に他ならない! この勝負もらった! 「いた! イリタクー!」 「お、有ちゃんどしたの?」 「ちょっと教えて欲しいんだけど、生爪ペンギンっていう……」 完璧だ。 さすがイリタク、流行りものには敏感だぜ。 意気揚々と席に戻る。 「どこ行ってたんだよ、あと10秒くらいしかないぞ」 「げ、制限時間なんてあったのか。まあいい……よし、俺の答えはこれだ! 『空対艦ミサイル』!」 「いやいやペンギンの口じゃくわえられないでしょそんなもん。つーか空飛んでるの? ペンギンなのに?」 「そっちの答えは何なんだよ」 「魚」 「普通だなー」 「うっさいな」 <答え:108式空対艦誘導弾> 「おいこれ不正解かよ! 細か過ぎるんだよ!」 「なんでミリタリー系クイズみたいになってるんだよ……」 「くそーイリタクめ、もっと正確に教えてくれよなー」 「えっなに、人に聞いてきたの? ルール違反じゃないのそれ?」 「お前はこのゲームの名前を忘れたのか」 「あーマキャヴェリズムってそういう……」 俺としたことが敵に塩を送ってしまったが、まあいずれバレただろう。 そこからのクイズは血で血を洗う泥沼の戦いだった。 周囲に助けを求めることができるようになったので正解率は上がったが、それは相手も同じこと。 答えを知っているギャラリーに、自分だけに答えを教えるよう買収工作したり、相手のパネルに答えを書けないよう細工したり…… そしてついに迎えた最終問題。 お互いに得点は3対3のイーブン。 <第十問:マーガレット神話の初期に登場した剣師のうち、最も多く魔法剣を使用した剣師の名を挙げよ> 「こっ……これは……」 「まさに魔法少年たる僕のための問題……!」 魔法少年ことアフシエーブは既に答えが分かっているようだった。 仕方ないのでこちらはギャラリーに聞いて回る。 しかし古い神話の問題だ、全ての剣師の名前と構成を暗記している者などいない。 皆なんとなく、ぼんやりした記憶はあるものの、その答えはバラバラ。 ちなみに俺はひとかけらの記憶もない。 いくつか得た名前の中から直感で選ぶ他ないようだった。 もう時間がない。 「くそっ、ここは運を天に任せる! 俺の答えは『魔法剣士ベアトリス』だ!」 「僕の答えは……『十字魔剣士ドレッサ』」 「別々の答えになったか……だがまだだ! まだわからん!」 「さあ……答えは……!?」 <答え:F・十津川硝子(もしくは十字魔剣士ドレッサ)> 「「うおおおおお!!」」 一斉に湧くギャラリー。 手を振って応えるアフシエーブ。 完全に負けたよ。 最後に魔法少年の意地を見せたな。 俺はその誇らしげな背中に拍手を送るのだった。 -------------------------------------------------------------------------------- 勝者:アフシエーブ --------------------------------------------------------------------------------