-------------------------------------------------------------------------------- 5/0/1/3/黙散詠残滅/空山海 5/2/0/2/盗導0壊吸毒/有 -------------------------------------------------------------------------------- 「空山、お前そんな喋り方だったっけ?」 「えっ? 何か変?」 「いや……やっぱいい。性格が豹変する奴なんてこの学校じゃ珍しくないか……」 俺と空山は今、バーチャルジェンガで対戦をしている。 説明せねばなるまい、バーチャルジェンガとは。 麻雀卓のような台の中央にジェンガの立体映像が投映される。 そして手元のボタンでバーチャルアームを操作してパーツを抜き取り、通常のジェンガと同じように積み重ねていく。 ソロから最大8人まで対戦可能で、秒数ルールなど各種細かい設定ができる。 「お前それ普通のジェンガやれよ」という出オチ感が逆に若者の感性を刺激して大ブームになったとかならないとか。 ともかくこんな微妙なゲームを二人っきりでやっているのは、空山が勝負を持ちかけてきたからだった。 負けた方がメイド服を着るという話に、俺はふたつ返事でOKした。 勝てば面白いものが見られるし、最悪負けてもバックレちゃおっかなと思っていたからだ。 「でもなんでジェンガなの?」 「ん? まあアレだ、一番フェアかなと思って」 「なるほど、さすがー」 「褒め讃えろ」 「すごいですねあこがれちゃうなー」 うそです。 さっきたまたまこのアホなゲームを見つけて数人でやってみたら、2P側のボタンが軽く壊れていた。 壊れていると言ってもちょっと感度が悪いというか、バーチャルアームが微妙にプルプルする程度。 しかし精密さを必要とするジェンガでは、後半の不安定な状態になるほど操作の精度が勝敗を分ける。 実際その席の奴は全敗だった。 事前にこれを知っていた俺は、迷うことなく空山を2P側に座らせたのだった。 「……あれ? ねえ木俣くん、なんかこれコントロールがおかしいような……」 「おい早くしろよ。30秒経っちまうぞ」 「えーちょっと……あれー? うまくいかな……あっ」 「あー。残念でしたー」 「ちょっと待ってよ、やり直そうよ。ボタンが……」 「おいおい見苦しいぞ。お前は俺が同じことを言ったらどう思うかな?」 「うー……わかったよ」 しょんぼりして着替えに向かう空山の背中を見送る。 イカサマで相手を負かすというのは実にスガスガしいものだ。 しかしあいつ、この修学旅行中はなんか性格がコロコロ変わっているみたいでちょっと不審に思っていたが…… こうして接している分には、大して問題ないみたいで良かった。 あいつもきっと複雑な何かを抱えているんだろう。 誰だってそうだ。 そんな奴らに俺たちができることなんて本当に少ない。 その数少ないうちのひとつが、日常を演出し続けることだと思う。 だから俺は俺らしく、本能の赴くままにメイド姿を拝ませてもらおうってわけですよガハハ。 -------------------------------------------------------------------------------- 勝者:有 --------------------------------------------------------------------------------